咳をすると頭が痛い!咳嗽性頭痛の原因と治療について
- 2023年4月13日
- 頭痛
皆様、こんにちは。
すぎなみ脳神経外科・しびれ・頭痛クリニック院長の遠藤です。

今回は、咳をしたときに起こる頭痛についてお話しします。
咳をした瞬間に、後頭部がズキッと痛む。
くしゃみをしたり、トイレでいきんだりしたときにも、同じような頭痛が起こる。
このような症状を経験したことはないでしょうか。
咳などをきっかけに起こる頭痛は、一般に「咳嗽性頭痛(がいそうせいずつう)」と呼ばれます。
咳嗽とは、医学用語で咳のことです。
多くの場合、頭痛は短時間で治まりますが、中には脳の病気が原因となっている場合もあるため、注意が必要です。
咳嗽性頭痛とは?

咳嗽性頭痛は、咳やくしゃみ、いきみなどをきっかけに突然起こる頭痛です。
特徴としては、
・咳やくしゃみをした瞬間に痛みが起こる
・トイレでいきんだときにも起こる
・後頭部を中心に痛むことが多い
・数秒から数分程度で治まることが多い
・40歳以上の方に比較的多い
などが挙げられます。
国際頭痛分類では、一次性咳嗽性頭痛の持続時間は1秒から2時間とされています。
ただし、実際には数秒から数分程度で治まるケースが多いとされています。
また、咳をしていないときには、ほとんど頭痛がないことも特徴です。
なぜ咳をすると頭が痛くなるの?

咳やくしゃみをすると、胸やお腹の中の圧力が一時的に上昇します。
それに伴い、頭の中の静脈圧や頭蓋内圧も一時的に変化します。
こうした圧力の変化が、頭痛の発生に関係していると考えられています。
ただし、詳しい発症メカニズムについては、まだ十分に解明されていません。
咳嗽性頭痛には2つのタイプがあります

咳をしたときに起こる頭痛は、大きく2つに分けられます。
① 一次性咳嗽性頭痛

MRI検査などで原因となる脳の病気が認められないタイプです。
咳やいきみなどによって頭痛が起こりますが、脳腫瘍やキアリ奇形などの明らかな原因疾患はありません。
比較的良性の経過をたどることが多く、自然に改善する場合もあります。
ただし、頭痛を繰り返す場合や、日常生活に支障がある場合には、薬による治療を検討します。
② 二次性咳嗽性頭痛
こちらは、何らかの病気が原因となって起こる頭痛です。

代表的な原因として、
・キアリ奇形(後述します)
・脳腫瘍
・脳脊髄液圧の異常
・一部の脳血管疾患
などが挙げられます。
咳をすると頭が痛むという症状だけでは、一次性なのか二次性なのかを判断することは困難です。
そのため、初めて咳嗽性頭痛が起こった場合には、原因となる病気がないか確認することが重要です。
特に注意したいキアリ奇形とは?

咳嗽性頭痛の原因として、脳神経外科で特に注意する病気の一つが「キアリ奇形」です。
キアリ奇形にはいくつかのタイプがありますが、咳嗽性頭痛との関連で重要なのは、キアリⅠ型奇形です。
キアリⅠ型奇形は、小脳の一部である小脳扁桃が、本来の位置より下方に下がり、頭蓋骨と頸椎の境界付近に入り込んでいる状態です。
この部分では、脳脊髄液という液体が脳と脊髄の周囲を循環しています。
小脳扁桃が下がることで脳脊髄液の流れが妨げられ、咳やいきみに伴う圧力の変化によって頭痛が起こると考えられています。
キアリ奇形による頭痛は、特に後頭部に起こりやすく、咳やいきみによって誘発されることが特徴です。
また、頭痛以外にも、
・首の痛み
・めまいやふらつき
・手足のしびれ
・歩行時の不安定さ
などが現れる場合があります。
ただし、キアリ奇形があっても、まったく症状がない方もいます。
MRIでキアリ奇形が見つかったからといって、必ずしもそれが頭痛の原因とは限りません。
キアリ奇形はMRIで診断できます

キアリ奇形は、MRI検査で小脳扁桃の位置や頭蓋頚椎移行部の状態を確認することで診断します。
必要に応じて頚髄の状態なども詳しく調べます。
症状のない方では経過観察となる場合もありますが、症状が強い場合や脊髄空洞症(脊髄内に水が貯まっている状態)などを伴う場合には、手術が検討されることもあります。
咳をすると頭が痛い場合、MRI検査は必要?

咳嗽性頭痛では、MRI検査が重要な役割を果たします。
特に、初めて症状が現れた場合や、頭痛を繰り返す場合には、原因となる病気がないか調べることが大切です。
MRI検査では、脳腫瘍などの病変に加え、キアリ奇形の有無を確認します。
キアリ奇形を評価する際には、脳だけでなく、頭蓋骨と頸椎の境界部分まで確認することが重要です。
なお、突然これまで経験したことのない激しい頭痛が起こった場合には、くも膜下出血などの緊急性の高い病気も考える必要があります。
このような場合は、通常の外来検査を待たず、救急受診が必要です。
一次性咳嗽性頭痛の治療

MRI検査などで原因となる病気が認められず、一次性咳嗽性頭痛と診断された場合には、症状に応じて治療を行います。
一次性咳嗽性頭痛に対しては、インドメタシンという消炎鎮痛薬が有効であることが知られています。
インドメタシンは、一般的な頭痛薬と同じ非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の一種ですが、一次性咳嗽性頭痛に対して比較的高い効果が報告されています。
当院でも、患者さんの症状や既往歴などを踏まえ、必要に応じて薬物治療を検討します。
なお、インドメタシンに関連する薬剤として、アセメタシン(商品名:ランツジール)があります。
アセメタシンは、体内でインドメタシンに変化して作用する薬剤です。
ただし、一次性咳嗽性頭痛に対する有効性の根拠はインドメタシンそのものが中心であり、両者の効果が完全に同じと確認されているわけではありません。
また、これらの薬剤には胃腸障害や腎機能への影響などの副作用があるため、使用には注意が必要です。
症状が軽い場合には、薬を使用せず経過をみることもあります。
こんな頭痛には注意してください
咳をしたときに頭痛が起こる場合、特に以下のような症状には注意が必要です。
・今まで経験したことのない激しい頭痛が突然起こった
・頭痛が徐々に強くなっている
・咳をしていないときにも頭痛が続く
・手足のしびれや麻痺を伴う
・めまいやふらつき、歩行障害を伴う
・吐き気や嘔吐を繰り返す
特に、突然の激しい頭痛や神経症状を伴う場合には、救急医療機関での評価が必要です。
まとめ

咳やくしゃみ、いきみなどをきっかけに起こる頭痛は、咳嗽性頭痛と呼ばれます。
多くは短時間で治まりますが、原因となる脳の病気が隠れていることもあります。
特に重要なのが、キアリ奇形や脳腫瘍などの病気を見逃さないことです。
原因となる病気がないことを確認したうえで、一次性咳嗽性頭痛と診断することが大切です。
当院では、脳神経外科の立場から診察を行い、必要に応じてMRI検査などで頭痛の原因を詳しく調べています。
咳をしたときに頭が痛くなる症状が続く場合には、放置せず、当院を含めた医療機関へご相談ください。
