腕のしびれ、頚椎症と言われたけれど……実は「胸郭出口症候群」かもしれません|すぎなみ脳神経外科・しびれ・頭痛クリニック|西荻窪駅・久我山駅

〒167-0053東京都杉並区西荻南1丁目1-1 西荻南メディカルモール3階
Tel:03-3332-0777
fax:03-3332-0788
ヘッダー画像

ブログ

腕のしびれ、頚椎症と言われたけれど……実は「胸郭出口症候群」かもしれません|すぎなみ脳神経外科・しびれ・頭痛クリニック|西荻窪駅・久我山駅

腕のしびれ、頚椎症と言われたけれど……実は「胸郭出口症候群」かもしれません

皆様、こんにちは。

すぎなみ脳神経外科・しびれ・頭痛クリニック院長の遠藤です。

腕や手のしびれが続き、病院で頚椎のMRIを撮影したところ、「頚椎症ですね」と診断されたことはありませんか?

もちろん、頚椎症は腕や手のしびれを起こす代表的な疾患です。

しかし、腕や手のしびれの原因が、必ずしも首の骨や椎間板にあるとは限りません。

頚椎のMRIではそれほど強い神経の圧迫がないのに、腕のしびれやだるさがなかなか改善しない。

こうした場合、頚椎以外にも原因がないか考える必要があります。

今回は、頚椎症と症状が似ている「胸郭出口症候群(きょうかくでぐちしょうこうぐん)」について、わかりやすく解説したいと思います。

1.胸郭出口症候群とは?

胸郭出口症候群とは、首から腕に向かう神経や血管が、鎖骨周辺などの狭い部分で圧迫されたり、刺激されたりすることで、腕や手にさまざまな症状が現れる疾患です。

首から腕に向かう神経は「腕神経叢(わんしんけいそう)」と呼ばれ、首の筋肉や鎖骨の周囲を通って腕へと伸びています。

この神経の通り道が狭くなったり、腕の位置によって神経が引っ張られたりすると、しびれや痛み、だるさなどが生じることがあります。

胸郭出口症候群には、大きく分けて神経が関係するタイプと、血管が関係するタイプがあります。

実際には、神経が関係するタイプが大部分を占めています。

2.どのような症状が出るの?

胸郭出口症候群では、次のような症状がみられます。

・腕や手がしびれる

・腕全体が重い、だるい

・肩から腕にかけて痛みがある

・鎖骨の周囲や胸の上部に痛みがある

・肩甲骨の周囲や背中が痛む

・手に力が入りにくい

・腕を上げていると症状が強くなる

・長時間同じ姿勢でいると腕がつらくなる

 

特に特徴的なのが、腕の位置や姿勢によって症状が変化することです。

例えば、洗濯物を干す、ドライヤーを使う、電車のつり革につかまるといった動作で、腕のしびれやだるさが強くなることがあります。

また、なで肩の方や、肩が前に出る姿勢が続いている方などにもみられます。

もう一つ、知っておいていただきたい特徴があります。

それは、腕のしびれだけでなく、鎖骨周囲や肩甲骨周囲、胸のあたりにも痛みが広がることがあるという点です。

頚椎症でも肩甲骨周囲や胸部に痛みが出ることはありますが、胸郭出口症候群では、こうした部位の痛みを腕の症状とともに訴えるケースがあります。

特に、鎖骨の周囲から胸の上部、肩や肩甲骨周囲にかけての痛みがあり、腕の位置によって症状が変化する場合には、胸郭出口症候群も疑う手がかりになります。

ただし、痛みの場所だけで両者を区別できるわけではありません。

また、胸痛には心臓や肺などの病気が隠れていることもあるため、胸郭出口症候群と決めつけないことも重要です。

3.頚椎症との違いは?

頚椎症と胸郭出口症候群は、どちらも腕や手のしびれを起こすため、症状だけでは区別が難しい場合があります。

大まかな違いをまとめてみます。

頚椎症(神経根症) 胸郭出口症候群
主な原因 頚椎での神経の圧迫 鎖骨周辺などでの神経・血管への圧迫や刺激
主な症状 腕の痛み、しびれ、筋力低下 腕のしびれ、だるさ、痛み
痛みの範囲 首、肩、肩甲骨周囲、腕など 鎖骨周囲、肩、肩甲骨周囲、胸部、腕など
悪化しやすい動作 首を反らす、ひねる 腕を上げる、特定の姿勢を続ける
MRI 神経の圧迫が確認できることがある 通常の頚椎MRIでは異常がわからないことも多い

胸郭出口症候群では、腕の症状に加えて、鎖骨周囲や胸の上部などに痛みが出ることがあります。

一方、頚椎症でも肩甲骨周囲や胸部に痛みが出ることがあるため、痛みの場所だけで診断することはできません。

特に、腕を上げる動作や姿勢によって症状が変化するかどうかは、診察の際に参考になります。

もちろん、これはあくまで一般的な傾向です。

頚椎症でも腕の位置によって症状が変化することがありますし、胸郭出口症候群でも首や肩に痛みが出ることがあります。

また、頚椎症と胸郭出口症候群が同時に存在しているケースもあります。

実際の診療では、必ずしも教科書通りの症状が出るとは限らないのです。

4.MRIで頚椎症が見つかっても、それが原因とは限りません

ここは、ぜひ知っておいていただきたいポイントです。

頚椎のMRIを撮影すると、加齢による椎間板の変性や骨の変形が見つかることは珍しくありません。

特に中高年の方では、症状がなくても頚椎に変化がみられることがあります。

つまり、MRIで頚椎症が見つかったからといって、現在の腕のしびれがすべて頚椎症によるものとは限らないのです。

例えば、MRIでは神経の圧迫が軽度なのに、腕全体の強いだるさやしびれが続いている場合。

あるいは、鎖骨の周囲や胸の上部にも痛みがあり、腕を上げると症状が強くなる場合。

こうした場合には、胸郭出口症候群を含めた別の原因も検討する必要があります。

もちろん、MRIでの圧迫が軽く見えても、頚椎症が症状の原因になっていることはあります。

大切なのは、画像所見だけで判断するのではなく、実際の症状や診察所見と照らし合わせることです。

5.どのように診断するの?

胸郭出口症候群の診断では、まず症状の出方や、どのような姿勢で悪化するのかを詳しく確認します。

診察では、首や肩、腕の動きによって症状が変化するか、筋力低下や感覚障害がないかなどを調べます。

また、胸郭出口症候群を疑う際には、いくつかの特徴的な診察方法があります。

・Morleyテスト(モーリーテスト)

首の付け根から鎖骨の上あたりにある、斜角筋という筋肉の周囲を指で圧迫し、腕や手にしびれや痛みが誘発されるかを確認する検査です。

この部分を押した際に、普段感じている腕のしびれや痛みが再現される場合には、胸郭出口症候群を疑う手がかりになります。

 

・Roosテスト(ルーステスト)

両腕を上げた状態で、手を繰り返し開いたり閉じたりする検査です。

この動作によって腕のしびれやだるさ、痛みなどが再現されるかを確認します。

ただし、MorleyテストやRoosテストが陽性だからといって、それだけで胸郭出口症候群と確定できるわけではありません。

健康な方でも症状が誘発されることがあり、ほかの診察所見と合わせて判断する必要があります。

必要に応じて、以下の検査も組み合わせます。

 

 ・頚椎MRI

頚椎椎間板ヘルニアや頚椎症性神経根症、頚髄症などがないか確認します。

 

・神経伝導検査・筋電図検査

神経伝導検査や筋電図検査は、手根管症候群や肘部管症候群、頚椎の神経根障害などとの鑑別に役立ちます。胸郭出口症候群では異常がみられないこともありますが、一部の症例では特徴的な異常が確認されることもあります。

 

 ・X線・超音波・血管の画像検査など

必要に応じて、頚肋と呼ばれる骨の異常や、血管の圧迫などを確認します。

胸郭出口症候群は、一つの検査だけで簡単に診断できる疾患ではありません。

ほかの疾患を除外しながら、総合的に判断していくことが重要です。

6.治療はどうするの?

神経が関係する胸郭出口症候群では、まず保存的治療を行うことが一般的です。

・姿勢の改善とリハビリテーション

肩や肩甲骨周囲の筋肉のバランスを整え、神経への負担を減らすことを目指します。

長時間の前かがみ姿勢や、肩に負担のかかる動作を見直すことも大切です。

ただし、無理なストレッチや筋力トレーニングによって、かえって症状が悪化する場合もあります。

 

・薬物療法

痛みやしびれが強い場合には、症状に応じて鎮痛薬や神経障害性疼痛に対する薬剤などを使用することがあります。

ただし、薬だけで神経への圧迫そのものを解消できるわけではありません。

 

・手術が必要になることも

保存的治療で改善せず、症状が強い場合や、進行する筋力低下などがある場合には、専門施設で手術が検討されることもあります。

また、腕の腫れや変色、冷感などを伴う血管性の胸郭出口症候群では、早急な評価や専門的な治療が必要になることがあります。

7.胸郭出口症候群は専門的な診断が必要なこともあります

胸郭出口症候群は、頚椎症や末梢神経障害などと症状が似ており、診断が難しいことも少なくありません。

また、胸郭出口症候群を専門的に診療している医師や医療機関は、決して多くありません。

当院では、まず診察や必要な画像検査などを通じて、頚椎疾患をはじめとしたほかの原因がないかを確認します。

そのうえで、胸郭出口症候群が疑われ、さらに専門的な精査や治療が必要と判断した場合には、慶應義塾大学病院の胸郭出口症候群を専門とする外来へご紹介しています。

すべての検査や治療を、一つのクリニックで完結させることが必ずしも最善とは限りません。

当院で対応できることはしっかり行い、より専門的な診療が必要な場合には、適切な医療機関と連携することを大切にしています。

8.腕のしびれには、ほかにもさまざまな原因があります

腕や手のしびれを起こす疾患は、頚椎症と胸郭出口症候群だけではありません。

例えば、

・手根管症候群

 

・肘部管症候群

 

・頚椎椎間板ヘルニア

 

・頚椎症

 

・その他の末梢神経障害

 

・脳梗塞などの脳血管障害

など、さまざまな疾患が考えられます。

特に、突然片側の腕がしびれたり、力が入らなくなったりした場合には、脳卒中の可能性もあるため、速やかな救急受診が必要です。

また、両手の細かい動作が難しくなる、歩きにくくなるといった症状は、頚髄症でもみられます。

なお、胸痛が突然出現した場合や、息苦しさ、冷や汗などを伴う場合には、心臓や肺の病気も考えられます。こうした場合も、胸郭出口症候群と自己判断せず、速やかに救急受診してください。

しびれという症状は同じでも、その原因によって治療方針は大きく異なります。

まとめ

腕や手のしびれが続いている場合、頚椎症が原因であることは少なくありません。

しかし、頚椎MRIで明らかな神経の圧迫がない場合や、腕の位置によって症状が大きく変化する場合には、胸郭出口症候群という疾患も考える必要があります。

特に、腕のしびれに加えて、鎖骨周囲や肩甲骨周囲、胸の上部にも痛みがある場合には、胸郭出口症候群も鑑別診断の一つになります。

ただし、こうした痛みは頚椎症でも起こり得るため、症状だけで区別することはできません。

大切なのは、画像検査の結果だけで判断せず、症状や診察所見を含めて原因を見極めることです。

当院では、脳神経外科の立場から、頚椎疾患や末梢神経障害など、さまざまなしびれの原因を検討しています。

MRIやCT、神経伝導検査などを必要に応じて活用し、専門的な精査や治療が必要な場合には、大学病院などの専門施設とも連携しています。

腕や手のしびれが長引いている方、頚椎症と言われたものの症状がなかなか改善しない方は、当院に一度ご相談ください。