風邪のあとに頭痛が続く……髄膜炎の可能性は?脳神経外科医が解説
- 2023年3月28日
- 頭痛
皆様、こんにちは。
すぎなみ脳神経外科・しびれ・頭痛クリニック院長の遠藤です。

「風邪をひいてから、頭痛がなかなか治らない」
「熱は下がったのに、頭痛だけが続いている」
こうした症状で受診される患者さんがいらっしゃいます。
風邪のあとに頭痛が続く原因はいくつかありますが、その中で注意したい病気の一つが『髄膜炎(ずいまくえん)』です。
髄膜炎というと、非常に重い病気というイメージがあるかもしれません。
確かに、緊急の治療が必要な髄膜炎もあります。一方で、比較的軽症で経過するものもあります。
今回は、髄膜炎による頭痛の特徴や、MRIでわかるのか、どのような検査・治療が必要になるのかについて解説します。
1.髄膜炎とは?

私たちの脳や脊髄は、「髄膜」という薄い膜に包まれています。
この髄膜に炎症が起こる病気が、髄膜炎です。
原因としては、ウイルスや細菌、真菌(カビ)などの感染症が代表的です。
また、頻度は低いものの、感染症以外が原因となる場合もあります。
髄膜炎にはさまざまな種類がありますが、特に知っておいていただきたいのは、ウイルス性髄膜炎と細菌性髄膜炎の違いです。
① ウイルス性髄膜炎

ウイルス感染によって髄膜に炎症が起こる病気です。
原因となるウイルスには、エンテロウイルスなどがあります。
ウイルス性髄膜炎は、細菌性髄膜炎と比べると比較的軽症で経過することが多く、自然に改善するケースもあります。
ただし、強い頭痛や嘔吐によって食事や水分が取れず、入院が必要になることもあります。
また、原因となるウイルスによっては、抗ウイルス薬による治療が必要です。
ウイルス性だからといって、必ず軽症とは限りません。
② 細菌性髄膜炎

細菌が原因となる髄膜炎です。
こちらは、特に注意が必要です。
細菌性髄膜炎は急速に悪化することがあり、治療が遅れると命に関わる場合があります。
高齢者や免疫力が低下している方だけでなく、若くて健康な方にも発症することがあります。
疑われる場合には、速やかに入院し、抗菌薬などによる治療を開始する必要があります。
細菌性髄膜炎は、一刻を争うことがある救急疾患です。
2.髄膜炎では、どんな頭痛が起こるの?
髄膜炎では、次のような症状がみられることがあります。

・強い頭痛が続く
・発熱を伴う
・吐き気や嘔吐がある
・首の後ろが硬くなる、動かしにくい
・光がまぶしい
・全身のだるさが強い
特に、頭痛・発熱・首の硬さは、髄膜炎を考えるうえで重要な症状です。
ただし、これらが必ずすべてそろうわけではありません。
熱がないから髄膜炎ではない、首が硬くないから大丈夫、とは言い切れないのです。
高齢者や免疫力が低下している方では、典型的な症状がはっきりしない場合もあります。
また、意識がおかしい、けいれんがある、急速に状態が悪化しているといった場合には、特に注意が必要です。
3.風邪のあとに頭痛が長引いたら、髄膜炎?
風邪をひいたあと、頭痛だけが長引くことがあります。
こうした場合、髄膜炎も鑑別診断の一つになります。
ただし、風邪のあとに頭痛が続くからといって、すぐに髄膜炎というわけではありません。
感染症をきっかけに片頭痛が悪化したり、脱水や睡眠不足などによって頭痛が続いたりすることもあります。
また、片頭痛そのものが数日間続くこともあります。
大切なのは、頭痛が何日続いているかだけではなく、
・頭痛がどのように始まったか
・発熱を伴っているか
・吐き気や嘔吐が強いか
・首の硬さがあるか
・症状が改善しているのか、悪化しているのか
といった点を確認することです。
例えば、風邪の症状が改善したあとも強い頭痛が続き、発熱や嘔吐を伴う場合には、髄膜炎を考える必要があります。
一方で、頭痛が長引いているという理由だけで、すべての方に髄膜炎の検査が必要になるわけではありません。
4.MRIやCTで髄膜炎はわかるの?

ここは、患者さんにも知っておいていただきたいポイントです。
当院では、頭痛の精査としてMRIやCTを行うことがあります。
しかし、髄膜炎は、通常の脳MRIやCTで明らかな異常が見つからないこともあります。
つまり、MRIで脳に異常がないからといって、髄膜炎を完全に否定できるわけではありません。
一方、MRIやCTは、脳腫瘍や脳出血など、ほかの頭痛の原因を調べるうえで重要です。
また、髄膜炎に伴う合併症や、脳炎などが疑われる場合にも役立つことがあります。
大切なのは、画像検査だけで判断するのではなく、症状や診察所見、血液検査などを含めて総合的に評価することです。
5.髄膜炎の診断には、髄液検査が重要です

髄膜炎が疑われる場合には、髄液検査が重要になります。
髄液とは、脳や脊髄の周囲を満たしている液体のことです。
腰の部分から細い針を刺して髄液を採取する「腰椎穿刺」という検査を行います。
採取した髄液について、細胞数や糖、タンパク、細菌・ウイルスの検査などを行い、髄膜炎の有無や原因を調べます。
髄液検査は、ウイルス性と細菌性の髄膜炎を鑑別するうえでも重要です。
ただし、患者さんの状態によっては、腰椎穿刺の前に画像検査などが必要になることもあります。
また、細菌性髄膜炎が強く疑われる場合には、検査のために抗菌薬の開始を遅らせてはいけません。
当院では髄液検査を行っていないため、髄膜炎が疑われる場合には、必要に応じて速やかに検査・治療が可能な病院へご紹介しています。
6.髄膜炎の治療は?
治療は、原因によって大きく異なります。
・ウイルス性髄膜炎

比較的軽症の場合には、安静、水分補給、鎮痛薬などによる対症療法が中心となることがあります。
ただし、強い頭痛や嘔吐がある場合には、入院して点滴などの治療が必要になることもあります。
また、ヘルペスウイルスなどが原因として疑われる場合には、抗ウイルス薬を使用することがあります。
・細菌性髄膜炎

速やかな入院治療が必要です。
抗菌薬をできるだけ早く開始し、原因菌や病状に応じて治療を調整します。
場合によっては、ステロイド薬を併用することもあります。
細菌性髄膜炎では、治療開始までの時間が非常に重要です。
そのため、疑わしい症状がある場合には、早急に医療機関を受診する必要があります。
7.こんな症状がある場合は、すぐに受診してください
髄膜炎を疑う症状の中でも、特に注意が必要なのは次のような場合です。

・強い頭痛と高熱がある
・頭痛に加えて首が硬く、動かしにくい
・嘔吐を繰り返している
・意識がぼんやりする、会話がおかしい
・けいれんが起きている
・頭痛や全身状態が急速に悪化している
このような場合には、外来の予約を待たず、救急外来を受診してください。
なお、突然始まった今までに経験したことのない激しい頭痛では、くも膜下出血なども考える必要があります。
頭痛の原因は髄膜炎だけではありません。
緊急性の高い病気を見逃さないことが大切です。
8.長引く頭痛は、原因を見極めることが大切です
頭痛が長引くと、脳の病気ではないかと心配される方も多いと思います。
しかし、実際には片頭痛や緊張型頭痛など、さまざまな原因が考えられます。
一方で、髄膜炎のように、画像検査だけでは診断できない病気が隠れていることもあります。
当院では、頭痛の経過や随伴症状、神経学的な診察所見などを確認し、必要に応じてMRIやCTによる検査を行っています。
そのうえで、髄膜炎など専門的な検査や入院治療が必要な病気が疑われる場合には、適切な医療機関と連携しています。
MRIが正常だから大丈夫、頭痛が長引いているから髄膜炎、という単純な話ではありません。
患者さん一人ひとりの症状を確認し、原因を見極めることが重要だと考えています。
まとめ
風邪のあとに頭痛が続く場合、髄膜炎が原因となっていることがあります。
髄膜炎では、頭痛に加えて発熱、嘔吐、首の硬さなどがみられることがありますが、典型的な症状がそろわない場合もあります。
また、MRIやCTで異常が見つからないこともあり、診断には髄液検査が重要です。
特に細菌性髄膜炎は、早急な治療が必要な病気です。
強い頭痛と発熱、首の硬さ、意識の変化などがある場合には、速やかに医療機関を受診してください。
一方、頭痛が長引いているからといって、必ずしも髄膜炎というわけではありません。
大切なのは、頭痛の特徴や経過、ほかの症状などを総合的に判断することです。
当院では、さまざまな頭痛の原因を検討し、必要に応じた検査や専門医療機関への紹介を行っています。
頭痛が長引いている方、いつもと違う頭痛が続いている方は、ご相談ください。ただし、急激に悪化する頭痛や意識障害などがある場合には、救急外来を受診してください。