顔の片側が突然動かない!顔面神経麻痺を起こす代表的な3つの病気
皆様、こんにちは。
すぎなみ脳神経外科・しびれ・頭痛クリニック院長の遠藤です。

今回は、顔の片側が突然動かなくなる「顔面神経麻痺」についてお話しします。
朝起きたら顔の半分が動かない、口から水がこぼれる、片方の目が閉じにくい。
このような症状が突然現れた場合、顔面神経麻痺が疑われます。
顔面神経麻痺の原因として代表的なのは、ベル麻痺、ハント症候群、そして脳梗塞の3つです。
特に注意したいのは、顔の麻痺が脳梗塞によって起こることもあるという点です。
それぞれの特徴について、わかりやすく解説します。
顔面神経麻痺とは?

顔面神経は、顔の表情を作る筋肉を動かす神経です。
この神経や、顔を動かす脳の神経経路に障害が起こると、顔の片側がうまく動かなくなります。
代表的な症状は以下のとおりです。

・片方の目が閉じにくい
・口の片側が下がる
・飲み物が口からこぼれる
・笑ったときに顔が左右非対称になる
・額にしわを寄せにくくなる
・うまく口が動かず、話しにくくなる
また、顔面神経には味覚に関係する神経線維も含まれているため、舌の味覚に異常が現れることもあります。
なお、顔面神経麻痺は、顔が動かなくなる病気です。
顔に激しい痛みが走る「三叉神経痛」とは異なる病気になります。
① ベル麻痺(特発性顔面神経麻痺)

突然起こる顔面神経麻痺の原因として、最も多いのがベル麻痺です。
特発性顔面神経麻痺とも呼ばれます。
特発性とは、原因がはっきり特定できないという意味です。
現在では、単純ヘルペスウイルスなどの再活性化によって顔面神経に炎症や腫れが生じることが、原因の一つとして考えられています。
顔面神経は、耳の奥にある狭い骨のトンネルを通っています。
そのため、神経が腫れると周囲から圧迫され、顔の筋肉をうまく動かせなくなると考えられています。
ベル麻痺の治療
治療の中心はステロイド薬です。
ステロイドによって神経の炎症や腫れを抑え、回復を促します。
必要に応じて抗ウイルス薬を併用することもあります。
特に重要なのは、発症からできるだけ早く、原則72時間以内に治療を開始することです。
ベル麻痺は比較的予後の良い病気で、多くの方は数週間から数か月かけて改善していきます。
ただし、麻痺が強い場合などには、顔の動きに左右差が残ったり、後遺症が生じたりすることもあります。
また、目が閉じられない場合には角膜が傷つくことがあるため、点眼薬などによる目の保護も重要です。
② ハント症候群(ラムゼイ・ハント症候群)

ハント症候群も、顔面神経麻痺を起こす代表的な病気です。
原因は、水ぼうそうや帯状疱疹を起こす水痘・帯状疱疹ウイルスです。
過去に感染したウイルスが神経節に潜伏し、再び活性化することで発症します。
ベル麻痺との大きな違いは、顔の麻痺に加えて、耳の症状を伴いやすいことです。
代表的な症状として、
・耳の強い痛み
・耳や耳の周囲の水ぶくれ
・難聴
・耳鳴り
・めまい
などがあります。
ただし、耳の水ぶくれが目立たない場合や、麻痺より遅れて現れる場合もあるため、注意が必要です。
ハント症候群の治療
治療には、ステロイド薬と抗ウイルス薬を使用します。
ベル麻痺と比べて麻痺が重症化しやすく、後遺症が残る可能性も高いため、早期の診断と治療が重要です。
重症度によっては入院治療が必要になることもあります。
顔の麻痺に耳の痛みや難聴、めまいなどを伴う場合は、できるだけ早く耳鼻咽喉科を受診してください。
③ 脳梗塞

脳梗塞でも、顔の片側が動かなくなることがあります。
一般的に脳梗塞では、顔の麻痺に加えて、手足の麻痺や言葉の障害などを伴うことが多いです。
しかし、脳梗塞でも顔の麻痺だけが目立つことがあります。
特に注意したいのが、脳幹の一部である橋(きょう)に起こる脳梗塞です。
橋には、顔面神経の核や神経線維が存在しています。
この部分に小さな脳梗塞が起こると、ベル麻痺と非常によく似た顔面神経麻痺が現れることがあります。
ベル麻痺と脳梗塞は見分けられる?

一般的には、額にしわを寄せられるかどうかが鑑別の参考になります。
脳の大脳半球に起こる脳梗塞では、額の動きが比較的保たれ、口の周囲を中心に麻痺が現れることがあります。
一方、ベル麻痺では、額から口元まで顔の片側全体が動きにくくなることが特徴です。
ただし、これは絶対的な区別ではありません。
脳幹梗塞では、額を含めた顔の片側全体が麻痺することもあります。
そのため、顔の動きだけで脳梗塞を完全に否定することはできません。
MRI検査が必要になることもあります

突然顔が動かなくなった場合、症状や神経学的診察から脳梗塞の可能性を判断します。
脳梗塞が疑われる場合には、MRIなどの画像検査が重要になります。
特に脳幹の小さな脳梗塞では、CT検査だけでは病変を確認しにくいことがあります。
ただし、典型的なベル麻痺のすべての患者さんにMRI検査が必要というわけではありません。
症状の現れ方や診察所見などを踏まえ、必要な検査を判断します。
なお、発症直後の小さな脳幹梗塞では、MRIでも病変がはっきり確認できないことがあるため、画像検査だけでなく診察所見も重要です。
突然顔が動かなくなったら、どうすればよい?
顔の片側が突然動かなくなった場合は、自己判断せず、早めに医療機関を受診することが大切です。
特に、
・手足にも力が入りにくい
・言葉が出にくい、ろれつが回らない
・物が二重に見える
・強いめまいやふらつきがある
・突然、歩けなくなった
といった症状を伴う場合には、脳卒中の可能性があります。
このような場合は、通常の外来受診を待たず、救急車を呼んでください。
また、顔の麻痺だけの場合でも、突然発症した場合には速やかな評価が必要です。
ベル麻痺やハント症候群であっても、治療開始が遅れると回復に影響する可能性があります。
まとめ
顔の片側が突然動かなくなる原因として、代表的なのは以下の3つです。
① ベル麻痺: 最も多い末梢性顔面神経麻痺で、ステロイド治療が中心です。

② ハント症候群: 帯状疱疹ウイルスが原因で、耳の痛みや難聴、めまいなどを伴うことがあります。

③ 脳梗塞: 顔の麻痺だけで発症する場合もあり、特に脳幹梗塞ではベル麻痺と似た症状が現れることがあります。

このほかにも、外傷、耳の病気、腫瘍など、さまざまな原因で顔面神経麻痺が起こることがあります。
大切なのは、顔の麻痺が起こったときに、原因を適切に判断することです。
当院では、脳神経外科の立場から神経学的診察を行い、必要に応じてMRI検査などを実施しています。
脳梗塞が疑われる場合には、速やかに適切な医療機関での診療につなげます。
また、ベル麻痺やハント症候群が疑われる場合には、耳鼻咽喉科などの専門診療につなげることも重要と考えています。
顔の片側が突然動かなくなった場合は、放置せず、当院を含めた医療機関へ速やかにご相談ください。