目の前がチカチカ・ギザギザ。閃輝暗点とは?
- 2026年10月12日
- 頭痛
皆様、こんにちは。
すぎなみ脳神経外科・しびれ・頭痛クリニック院長の遠藤です。

今回は、外来でも比較的よくご相談いただく「閃輝暗点(せんきあんてん)」についてお話しします。
「突然、目の前にギザギザした光が見えた」
「視界の一部がチカチカして、文字が読みにくくなった」
「キラキラしたものが徐々に広がって、しばらくすると消えた」
このような症状を経験したことはないでしょうか。
初めて経験すると、目や脳に何か重大な病気が起きたのではないかと心配になる方も多いと思います。
実際、閃輝暗点を主訴に当院を受診される患者さんも少なくありません。
閃輝暗点とは?

閃輝暗点とは、視界の一部にギザギザした光やキラキラした模様が現れ、徐々に広がっていく現象です。
典型的には、視界の中心付近に小さな光や見えにくい部分が現れ、それが徐々に大きくなり、視界の端の方へ移動していきます。
症状は通常5〜60分程度で消失し、元の見え方に戻ります。
特徴的なのは、突然視界全体が見えなくなるのではなく、光やギザギザした模様が時間をかけて広がっていくという点です。

また、片目だけの症状だと思っていても、実際には両目の同じ側の視野に症状が出ていることがあります。
これは、閃輝暗点の多くが目そのものではなく、脳の働きによって生じるためです。
なぜ閃輝暗点が起こるの?

閃輝暗点は、片頭痛の「前兆」としてよく知られています。
私たちの脳の後方には、視覚情報を処理する後頭葉という部分があります。
この後頭葉の神経細胞やグリア細胞に、一時的な活動の変化がゆっくりと広がっていく現象があり、これを皮質拡延性脱分極(CSD)と呼びます。
難しい言葉ですが、全く覚える必要はありません。簡単にいうと、脳の神経活動の変化が波のようにゆっくり広がっていく現象です。
この変化が視覚を担当する部分に起こることで、ギザギザした光が見えたり、視界の一部が見えにくくなったりすると考えられています。
つまり、閃輝暗点は目の異常というよりも、脳の視覚を処理する部分で起こる現象なのです。
閃輝暗点のあとに頭痛が起こる?

閃輝暗点は、片頭痛の前兆として出現することがあります。
典型的には、閃輝暗点が20〜30分程度続いたあとに症状が消失し、その後にズキズキとした頭痛が出現します。
ただし、すべての方に頭痛が起こるわけではありません。
閃輝暗点だけが起こり、その後に頭痛がまったく出ない方もいます。
これは「頭痛を伴わない典型的前兆」と呼ばれ、決して珍しいものではありません。
特に中高年の方では、以前は片頭痛があったものの、年齢とともに頭痛が減り、閃輝暗点だけが残ることもあります。
また、閃輝暗点のあとに必ず頭痛が起こるわけではなく、同時に起こったり、頭痛が先に始まったりすることもあります。
閃輝暗点が起こったら、脳のMRIは必要?

ここは患者さんからよく質問されるところです。
典型的な閃輝暗点は片頭痛の前兆であり、必ずしも重大な脳の病気を意味するわけではありません。
ただし、閃輝暗点に似た症状を起こす病気がほかにもあることには注意が必要です。
例えば、一過性脳虚血発作(TIA)や脳梗塞などでも、一時的に視野が欠けたり、見えにくくなったりすることがあります。

一般的に、片頭痛の前兆ではギザギザした光などの症状が徐々に広がることが多いのに対し、脳血管障害では突然視野が欠けるなどの症状がみられることが多いです。
ただし、症状だけで完全に区別できるわけではありません。
特に以下のような場合には注意が必要です。
・初めて閃輝暗点のような症状が出現した
・中高年になって初めて出現した
・これまでと症状の出方が明らかに異なる
・突然、視野の一部が見えなくなった
・視覚症状に加えて、手足の麻痺や言葉の出にくさを伴う
・症状が1時間以上続く、あるいは完全に回復しない
こうした場合には、脳血管障害などの可能性も考慮する必要があります。
突然の視力低下や視野障害、麻痺、言語障害などが出現した場合には、症状が改善しても一過性脳虚血発作(TIA)などの可能性があるため、速やかな救急受診が必要です。
また、片目だけが暗くなる場合には、網膜や眼の血管の病気が原因となることもあり、眼科的な評価が必要になる場合があります。
当院でも、症状の経過や神経学的所見などを確認したうえで、必要と判断した場合にはMRIなどの検査を行っています。
一方で、以前から同じような閃輝暗点を繰り返しており、典型的な経過を示す場合には、必ずしも毎回MRI検査が必要というわけではありません。
閃輝暗点は治療できる?

閃輝暗点そのものは、多くの場合、自然に消失します。
そのため、閃輝暗点が出現するたびに薬を使用する必要があるとは限りません。
また、一般的な鎮痛薬やトリプタン製剤は、閃輝暗点そのものを速やかに消失させる薬ではありません。
閃輝暗点のあとに片頭痛が起こる場合には、その頭痛に対する適切な治療を行います。
最近では、従来のトリプタン製剤に加え、レイボーやCGRP関連薬(ナルティーク)など、片頭痛治療の選択肢も増えています。
ただし、こうした薬剤も閃輝暗点自体を確実に止めるものではありません。
閃輝暗点が頻繁に起こる場合や、頭痛によって日常生活に支障が出ている場合には、片頭痛の予防治療を検討することもあります。
閃輝暗点は放っておいても大丈夫?
典型的な閃輝暗点であれば、それ自体が脳に重大な障害を残すことは通常ありません。
しかし、初めて経験する場合には、患者さんご自身で片頭痛の前兆なのか、別の病気なのかを判断するのは難しいと思います。
また、閃輝暗点があるからといって、必ず片頭痛と決めつけてよいわけでもありません。
特に、これまで経験したことのない視覚症状が突然現れた場合には、慎重な判断が必要です。
最後に
閃輝暗点は、片頭痛に関連して起こることが多く、必ずしも重大な病気を意味するものではありません。
一方で、似たような症状を起こす脳血管障害や眼科疾患もあるため、症状の現れ方や持続時間などを詳しく確認することが大切です。
私自身、外来で閃輝暗点の患者さんを診察する際には、「どのように見え始めたのか」「どのくらいの時間をかけて広がったのか」「片目だけなのか、両目なのか」といった点を特に重視しています。
画像検査も重要ですが、こうした症状の経過を詳しく伺うことが、診断の大きな手がかりになるからです。
当院では、頭痛専門医・脳神経外科専門医として、閃輝暗点をはじめとする片頭痛の診断・治療を行っています。
必要に応じて当日MRI検査も行っていますので、気になる症状がある方はお気軽にご相談ください。