スポーツ中に脳震盪を起こしたら、いつから復帰できる?
- 2026年10月12日
- 頭部外傷
皆様、こんにちは。
すぎなみ脳神経外科・しびれ・頭痛クリニック院長の遠藤です。

今回は、スポーツ中に起こる「脳震盪(のうしんとう)」についてお話しします。
サッカーやラグビー、アメリカンフットボール、柔道など、スポーツ中に頭を強く打ってしまうことがあります。
当院でも、スポーツ中に頭を打った患者さんが受診されることがあります。
その際によく聞かれるのが、
「脳震盪と言われたけど、何日くらい休めばいいですか?」
「意識は失っていないので、すぐに運動しても大丈夫ですか?」
「CTやMRIで異常がなければ、試合に出てもいいですか?」
といった質問です。
実は、脳震盪を起こした後の競技復帰については、以前と現在で考え方が変わってきています。
今回は、アメリカンフットボールなどで研究されてきた脳震盪の競技復帰基準も交えながら、わかりやすく解説します。
脳震盪とは?

脳震盪とは、頭に強い衝撃が加わることで、一時的に脳の働きに異常が生じる状態です。
例えば、スポーツ中に頭をぶつけた後、
・頭痛がする
・めまいや吐き気がする
・頭がぼーっとする
・直前の出来事を覚えていない
・集中できない
・一時的に意識を失う
といった症状が現れます。

ここで知っておいていただきたいのは、脳震盪=意識を失う、というわけではないことです。
意識を失わなくても脳震盪は起こりますし、頭痛やめまいだけが続くこともあります。
また、頭を直接ぶつけていなくても、身体に強い衝撃が加わることで脳震盪を起こすことがあります。
昔は「意識を失った時間」で休養期間を決めていた
アメリカでは、アメリカンフットボールなどのスポーツで脳震盪が大きな問題となり、以前からさまざまな研究が行われてきました。
1997年には、アメリカ神経学会(AAN)が脳震盪の重症度を3段階に分類し、競技復帰の目安を示しています。
当時の考え方を簡単にまとめると、以下のようになります。

※1997年の古い基準を簡略化したものです。現在の競技復帰基準ではありません。
つまり、以前は「意識を失ったかどうか」「どのくらい意識を失っていたか」が、競技復帰を判断する大きな材料になっていました。
しかし、その後の研究によって、この考え方は見直されるようになりました。
現在は、意識消失の有無だけでは判断しない
例えば、次のようなケースを考えてみてください。
ケース①
頭を打って数秒間意識を失ったものの、その後は頭痛やめまいもなく、比較的早く症状が改善した。
ケース②
意識は一度も失っていないものの、頭を打ってから何日も頭痛やめまいが続いている。
昔の分類では、意識を失ったケース①の方が重症と判断されることがありました。
しかし、実際にはケース②の方が回復までに時間がかかることもあります。
つまり、意識を失ったかどうかだけでは、脳震盪の重症度や回復までの期間は判断できないということです。
もちろん、意識消失があった場合は、重篤な頭部外傷の可能性も考える必要があります。
そのため、意識を失った場合には、その日の競技復帰は認められず、速やかな医学的評価が必要です。
では、何日休めばスポーツに復帰できるの?
現在は、一定の日数が経過したら一気に競技へ復帰するのではなく、段階的に運動量を増やしていく方法が推奨されています。
2022年にアムステルダムで開催された国際会議でも、こうした競技復帰の方法が示されました。
簡単にまとめると、以下のようになります。

基本的には、各段階に最低24時間程度をかけて進めていきます。
ただし、6段階だからといって、6日で必ず復帰できるわけではありません。
途中で頭痛やめまいが悪化する場合には、運動量を減らしたり、前の段階に戻したりする必要があります。
また、軽い運動では多少症状が出ても許容される場合がありますが、接触を伴う練習に進む前には、症状や診察所見が十分に回復していることが重要です。
一般的には、完全な競技復帰まで数週間程度かかることも珍しくありません。
特に、お子さんや学生の場合には、競技への復帰だけでなく、学校生活や勉強への復帰も考える必要があります。
CTやMRIで異常がなければ大丈夫?

これは当院でもよく聞かれる質問です。
結論から言うと、CTやMRIが正常でも、脳震盪を起こしている可能性はあります。
脳震盪は、脳の働きに一時的な異常が生じる病態です。
そのため、通常のCTやMRIでは異常が見つからないことが多くあります。
一方で、頭部外傷では脳震盪だけでなく、頭蓋内出血や脳挫傷などが起こっている可能性もあります。
CTは、こうした出血や骨折などを調べる際に役立ちます。
MRIも、必要に応じて脳挫傷や小さな出血などを詳しく調べる目的で使用します。
ただし、すべての脳震盪で画像検査が必要なわけではありません。
当院でも、受傷時の状況や症状、神経学的所見などを確認したうえで、必要な検査を判断しています。
大切なのは、「画像検査で異常がない=脳震盪から回復した」というわけではないことです。
検査で異常がなくても、頭痛やめまい、集中力の低下などが残っている場合には、慎重に競技復帰を判断する必要があります。
脳震盪を繰り返すと危険?
もう一つ注意したいのが、脳震盪を繰り返すことです。
十分に回復していない状態で再び頭を強く打つと、症状が悪化したり、回復までに時間がかかったりすることがあります。

特にアメリカンフットボールやラグビー、ボクシングなど、頭部への衝撃が繰り返される競技では、長期的な影響についても研究が行われています。
その一つが、慢性外傷性脳症(CTE)と呼ばれる病気です。
CTEは、繰り返される頭部への衝撃との関連が指摘されている神経変性疾患です。
ただし、一度脳震盪を起こしたからといって、将来必ずCTEになるわけではありません。
現時点では、個々の選手の将来的なリスクについて、まだ十分に解明されていない部分もあります。
だからこそ、脳震盪を軽く考えず、十分に回復してから競技に復帰することが大切です。
頭を打った後、こんな症状があれば注意
頭部外傷の後に、以下のような症状がある場合には、頭蓋内出血などの可能性も考える必要があります。

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意識が悪い、呼びかけへの反応がおかしい
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頭痛が次第に強くなる
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何度も嘔吐する
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手足に麻痺が出る
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けいれんを起こす
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会話がおかしい
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ふらつきが強い
このような症状がある場合には、速やかに救急医療機関を受診してください。
また、意識消失があった場合や、症状が軽くても脳震盪が疑われる場合には、その日の競技は中止し、医療機関で評価を受けることが大切です。
最後に
スポーツ中の脳震盪は、決して珍しいものではありません。
以前は、意識を失った時間などを基準に、競技復帰までの休養期間を決めていました。
しかし現在は、意識消失の有無だけでなく、頭痛やめまいなどの症状、診察所見、運動による症状の変化などを総合的に判断するようになっています。
私が特にお伝えしたいのは、「意識を失っていないから大丈夫」「CTやMRIが正常だからすぐにスポーツに戻れる」というわけではないということです。
特に学生さんの場合、試合が近いと早く復帰したくなる気持ちもあると思います。
しかし、無理をして復帰することで、かえって回復が長引いてしまうこともあります。
当院では、頭部外傷後の症状について脳神経外科専門医が診察を行い、必要に応じてCTやMRIなどの画像検査を実施しています。
頭を打った後の頭痛やめまいが続いている場合や、運動を再開してよいか迷っている場合には、お気軽にご相談ください。
参考文献
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American Academy of Neurology. Practice parameter: The management of concussion in sports (summary statement). Neurology. 1997;48:581–585.
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Patricios JS, et al. Consensus statement on concussion in sport: the 6th International Conference on Concussion in Sport–Amsterdam, October 2022. Br J Sports Med. 2023;57:695–711.
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CDC. HEADS UP: Returning to Sports.