サーファーズミエロパチーとは?サーフィン中に突然足が動かなくなる病気
皆様、こんにちは。
すぎなみ脳神経外科・しびれ・頭痛クリニック院長の遠藤です。

今回は、少し珍しい病気である「サーファーズミエロパチー」についてご紹介します。
皆さんは、サーフィンをしている最中に、突然両足が動かなくなってしまう病気があることをご存じでしょうか。
しかも、大きな波に巻かれたり、海底に体をぶつけたりしたわけではありません。
普通にサーフィンをしていただけなのに、突然足がしびれ、歩けなくなってしまうことがあるのです。
それが、今回ご紹介するサーファーズミエロパチーです。
非常に珍しい病気ですが、重症の場合には下半身の麻痺が残ることもあります。
サーファーズミエロパチーとは?

サーファーズミエロパチーは、サーフィン中に発症する脊髄の病気です。
ミエロパチーとは、脊髄症という意味で、脊髄の損傷をいいます。
脊髄とは、背骨の中を通っている太い神経の束で、脳からの指令を手足に伝えたり、手足の感覚を脳に伝えたりする重要な役割を担っています。
この脊髄が突然障害されることで、足のしびれや麻痺などが起こります。
特徴的なのは、サーフィン初心者に多く、明らかな外傷がなくても発症するという点です。
2004年に初めて報告された、比較的新しい疾患概念でもあります。
なぜサーフィンで脊髄が傷つくの?

サーフィンでは、ボードの上にうつ伏せになり、胸を持ち上げて腰を反らせながらパドリングを行います。
実は、この姿勢が発症に関係していると考えられています。
腰を強く反らせた姿勢を長時間続けることで、脊髄に血液を送る血管に負担がかかり、血流が悪くなる可能性があります。
脊髄も脳と同じように、血液から酸素や栄養を受け取っています。
そのため、血流が不足すると神経の働きが障害され、麻痺などの症状が出現します。
これは、脳の血管が詰まって起こる「脳梗塞」と似た仕組みです。
つまり、サーファーズミエロパチーは、脊髄に起こる脳梗塞のような病気と考えると、イメージしやすいかもしれません。
ただし、血流障害が起こる詳しい仕組みについては、まだ完全には解明されていません。
どのような症状が出るの?

最初は、腰の痛みや違和感から始まることが多いとされています。
その後、足のしびれや脱力が出現し、短時間で症状が進行することがあります。
代表的な症状は以下のとおりです。
・突然、腰が痛くなる
・両足がしびれる
・両足に力が入らなくなる
・立ち上がれない、歩けなくなる
・下半身の感覚が鈍くなる
・尿が出にくくなる、尿を漏らしてしまう
重症の場合には、両足がほとんど動かなくなる「対麻痺」という状態になることもあります。
また、最初は軽い腰痛だけだったものが、徐々に足の麻痺へと進行する場合もあります。
なぜ腕は動くのに、足だけ動かなくなるの?

ここは、少し不思議に思われるかもしれません。
脊髄は、障害される場所によって症状が出る部位が異なります。
首の部分にある「頸髄」が障害されると、腕と足の両方に麻痺が出ることがあります。
一方、サーファーズミエロパチーでは、主に背中から腰にかけての脊髄が障害されます。
この部分は、主に下半身の運動や感覚に関係しています。
そのため、腕や手は普通に動くのに、両足だけが動かなくなるという症状が起こるのです。
ただし、障害される範囲によっては、お腹や胸から下の感覚が鈍くなることもあります。
なぜ初心者に多いの?

サーファーズミエロパチーは、サーフィン経験の少ない初心者に多く報告されています。
その理由として、初心者はパドリングの姿勢に慣れておらず、必要以上に腰を反らせてしまうことが考えられています。
また、慣れない姿勢を長時間続けることで、腰や脊髄周囲に負担がかかる可能性もあります。
ただし、なぜ初心者に多いのかについては、まだ十分には解明されていません。
経験豊富なサーファーであれば絶対に発症しない、というわけでもありません。
MRIで診断できるの?

診断には、脊髄のMRI検査が重要になります。
サーファーズミエロパチーでは、主に胸から腰にかけての脊髄に異常が認められます。
MRIでは、脊髄の内部が通常より白く映ったり、脊髄が腫れたりすることがあります。
こうした変化は、脊髄への血流が障害された際にも認められる所見です。
ただし、発症して間もない時期には、MRIで明らかな異常が確認できないこともあります。
そのため、最初のMRIで異常がなかったからといって、必ずしも脊髄の病気を否定できるわけではありません。
症状によっては、時間をあけてMRIを再検査することもあります。
なお、診断には脊髄MRIが必要であり、頭部MRIだけでは評価できません。
治療すれば治るの?

残念ながら、現時点では確立された特別な治療方法はありません。
急性期には入院して、神経症状の変化を確認しながら、全身状態や血圧などを適切に管理します。
その後は、歩行機能や日常生活動作の回復を目指して、リハビリテーションを行います。
軽症の場合には、足の動きが改善し、再び歩けるようになることもあります。
一方で、重症の場合には、足の麻痺や排尿障害などの後遺症が残ることもあります。
特に、発症時の麻痺が強い場合には、回復に時間がかかったり、十分に回復しなかったりする可能性があります。
サーフィンをする際に気をつけることは?

サーファーズミエロパチーは非常に珍しい病気であり、過度に心配する必要はありません。
ただし、初心者の方は特に、無理な姿勢を長時間続けないことが大切です。
腰を必要以上に反らせず、適度に休憩を取りながらサーフィンを楽しみましょう。
また、サーフィン中に腰痛だけでなく、足のしびれや脱力が出現した場合には、すぐにサーフィンを中止してください。
両足に力が入らない、歩けない、尿が出にくいといった症状がある場合には、救急車を呼ぶなどして速やかに救急医療機関を受診する必要があります。
最後に
今回は、サーフィン中に突然下半身の麻痺が起こる「サーファーズミエロパチー」についてご紹介しました。
サーフィンによるけがというと、転倒や衝突による外傷を想像しがちですが、実際には大きな外傷がなくても、脊髄に重い障害が起こることがあります。
また、若く健康な方でも発症する可能性があり、重症の場合には後遺症が残ることもあります。
サーフィン中に突然足のしびれや脱力が出現した場合には、単なる腰痛や筋肉疲労と考えず、早急に医療機関を受診することが大切です。
非常に珍しい病気ではありますが、サーフィンを楽しむ方には、ぜひ知っておいていただきたい疾患の一つです。