CTでは脳梗塞はわからない?
- 2023年4月21日
- 脳卒中
皆様、こんにちは。
すぎなみ脳神経外科・しびれ・頭痛クリニック院長の遠藤です。
頭の中を調べる検査には、CTとMRIの2種類があります。
【CT】
【MRI】
ぱっと見は、同じ筒状となっていて似ていますね。
CTとMRIの違いについてはこちらで詳しく述べております。
今回は、脳卒中が疑われた場合、CTとMRIどちらが適しているのでしょうか。
結論
例外はありますが、脳卒中の診断には確実にMRIの方が適しております。
脳卒中には、脳梗塞、脳出血、くも膜下出血の3種類あります。
くも膜下出血は、激しい頭痛を伴うことがほとんどなので様相が少し違いますが、脳梗塞と脳出血は、ともに手足の麻痺、呂律が回らない、意識が悪くなるといった共通の症状がほとんどで、区別がつきません。
MRIは、この3種類の脳卒中全てを正確に診断できます。
CTは、脳梗塞に対しては、正確な診断ができません(できないことが多い)。
左がCT画像で、右がMRI画像です。
写真左のCT画像では、わずかに黒っぽくなっていますが、とてもわかりづらいですね。
一方、写真右のMRI画像では、しっかりと白っぽく写っていて、この場所が脳梗塞になったというのが一目瞭然にわかります。
では、脳卒中を疑った時に全例MRIを撮ればいいと思いますよね。
そこで、なぜCTを撮る場合もあるのか理由を羅列してみました。
① CTしかないから
CTしかない場合はどうしようもありません。
頑張ってCTで診断するしかありませんので、脳梗塞じゃないとしても、治療が遅れたり見逃したりするよりはマシなので、見切り発車的に脳梗塞の急性期治療を開始することも致し方ない時もあります。
② MRIは検査時間がかかるから
MRIは最低でも検査前問診など合わせると30分はかかります。
ペースメーカーが入っているなど絶対に撮ってはいけない人もいるのでそのチェックをしたり、持ち込み厳禁の貴金属類や電子機器などないか検査前チェックを必ず行うので、検査前に10分程度、かつ撮影に15分〜20分くらいかかります。
外来に歩いてこれる人にとってはたいした時間ではありませんが、一刻も争う脳卒中の疑いがある場合には、この時間はけっこう長く感じます。
③ MRIはいつも予約でいっぱいのことが多い
これも②の検査時間がかかることとも通じておりますが、1人の検査時間がかかるということは、1日に撮れる件数が限られてきますので、予約枠はそれほど多くありません。
当然緊急でない方もMRI検査を撮りますが、そういった方は、何週間も待って予約をいれます。
そうした状況で予約がパンパンになっている時に、緊急でMRIを入れるということは、何週間も待って予約した患者さんに了解を得て待ってもらうことになります。
もちろん重症患者さん優先ということをご理解されている患者さんがほとんどですが、立て続けにMRIを緊急で撮る方が続いてしまった場合などは、平気で1時間以上待たせてしまうことになります。
中には検査後に予定がある方もいるでしょうし、何のための予約なのかと思う方がいるのも当然かと思います。
そうしたはざまで、医療者側はなるべく早く結果がわかる検査をしたくなるのではないでしょうか。
CT は、長くても1人数分ですので、予約患者さんがいっぱいでも融通が効きますし、そもそも枠に余裕があることも多いです。
脳卒中を疑った時のCT活用のメリット
CTは、脳梗塞には弱いですが、脳出血・くも膜下出血・外傷性による出血などの出血病変には絶大な診断能力を発揮します。
数十秒という短時間で撮影できることも魅力です。
脳梗塞と脳出血は、症状だけでは区別がつきません。
経験的には何となくはわかることも多いですが、画像を撮ってみたら逆の見立てだったこともざらにあります。
MRIは、脳梗塞か脳出血か正確に診断できますが、前述したように、事前問診に約10分、撮影に15分〜20分、トータル30分はかかります。
そこで、事前準備もほとんど必要なく、撮影も数十秒のCT検査を行い、まず脳の中の出血がないことを確認します。
もし脳出血があれば、そこから無理してMRIを取る必要がなく、迅速に脳出血の治療を開始できます。
脳出血がないとしたら脳梗塞の可能性が高いわけで、脳梗塞の細かい部位の把握などは難しくても、脳梗塞の急性期治療を開始するという方法もとる場合があります。
本来は、MRIでしっかり脳梗塞の詳細を知った上で治療を開始することが望ましいのですが、先も述べたように全ての医療機関でMRIを迅速に撮れる環境とは限りません。
治療が遅れることで脳梗塞はどんどん悪化するので、CTだけで判断して治療を開始せざるを得ない状況もあるのが現状です。
MRIは万能ですが、CTも脳外科医にとって非常に重宝しています。
もちろん例外はありますが、概ね上記のようなご理解でよろしいかと思います。
何かのご参考になれば幸いです。