脳卒中について、どこよりもわかりやすく解説します
- 2023年4月3日
- 脳卒中
皆様、こんにちは。
すぎなみ脳神経外科・しびれ・頭痛クリニック院長の遠藤です。
今回は、脳卒中について、わかりやすく説明したいと思います。
脳卒中とは?
脳の血管の病気の総称のことを『脳卒中』といいます。
卒中をばらすと、卒=突然 中=中毒
という意味で、ある日突然脳の血管に異変が起こってしまうことです。
このある日突然というのが、脳卒中の特徴です。
脳卒中の種類
脳卒中には、血管がつまるタイプと破れるタイプがあります。
①血管がつまるタイプ
・脳梗塞(のうこうそく)
・一過性脳虚血発作(いっかせいのうきょけつほっさ)
②血管が破れるタイプ
・脳出血
・くも膜下出血
この4つについてそれぞれ解説してまいります。
脳梗塞
脳梗塞(のうこうそく)は、大きく分けて3種類あります。
ラクナ梗塞・アテローム血栓性脳梗塞・心原性脳梗塞に分けられます。
脳梗塞の原因
ラクナ梗塞・アテローム血栓性は、どちらも高血圧、高脂血症、糖尿病などを放置した結果の動脈硬化が原因です。
心原性梗塞は、主に心房細動という不整脈が原因です。心房細動があると心臓に血栓ができやすくなり、それがちぎれて脳の血管に飛んでしまった際に発症します。
脳梗塞の症状
つまってしまった血管の場所によって症状は様々ですが、下記の症状に当てはまることがほとんどです。
・片側の手と足に力が入らない
・顔を含む体の半身がしびれる
・呂律が回らなくなる
・言葉が出なくなる
・片側の目が見えなくなる
・視野の一部が欠ける
・物が二重に見える
・ふらついて立てない、歩けなくなる
脳梗塞の治療
現在日本で行われている脳梗塞の治療は、基本は薬による内科的な治療が中心です。
などを使用します。
脳梗塞の超急性期治療
全ての脳梗塞に適応があるわけではありませんが、脳梗塞発症早期であれば超急性期治療により大幅に回復する可能性があります。
発症から4.5時間以内であれば強力に血栓を溶かす薬(アルテプラーゼといいます)を使用して、つまった血管の再開通をねらいます。
発症から24時間以内であればカテーテルという血管の中にいれる細い管を使って血栓を直接取り除く方法が使える場合があります。
カテーテル治療は、以前は発症8時間以内までとされていましたが、条件を満たせば24時間以内でも改善が期待できる症例に対しては適応となりました。
特に大きな血管が詰まった脳梗塞では、発症早期に行えば治療効果が高いといわれています。
ただし、適応時間内でも、治療開始は早ければ早いほど、回復の可能性は高まります。
脳梗塞の治療は時間との戦いです。
脳梗塞と思ったらすぐ医療機関を受診してください。
一過性脳虚血発作
一過性脳虚血発作(いっかせいのうきょけつほっさ)とは、脳の血管が一旦は詰まりかけたものの、脳梗塞までは至らず、血流が再開した状態です。
24時間以内に症状が消えることが前提ですが、実際は発症1時間以内に症状が消えることが多く、たいしたことないと判断し、病院に行かない人も多いのです。
しかし一過性脳虚血発作が発症してから90日以内に脳梗塞を起こす可能性は15~20%であり、そのうち48時間以内の発症は半数と言われています。
速やかに治療を開始した場合、90日以内の脳卒中発症率が2.1パーセントまで低下させることができます。
そのためいかにこの症状を自覚し、医療機関に来ることが大事となっています。
脳出血
脳出血とは脳内の血管が何らかの原因で破れ、脳の内部に出血した状態です。
一般の方には、脳内出血といったほうが有名かもしれませんが、同義語です。
脳出血でも、脳梗塞と同様に意識障害、運動麻痺、感覚障害などの症状が現れます。
原因の多くは高血圧を放置していることで起こりますが、血管の奇形や動脈瘤などでも起こることがあります。
脳出血の症状
脳出血も、出血した部位で症状は変わってきますが、基本的には脳梗塞と類似しています。
意識が急激に悪くなることが脳梗塞より多い印象です。
脳出血の治療
出血が小さければ止血剤、脳の腫れを抑える薬、降圧薬などの内科的治療を行います。
出血が多いと、脳の腫れが強くなり脳幹(最も重要な部分)を圧迫し、脳ヘルニアという状態となり命に関わります。
そうなると救命するためには緊急手術が必要になります。
ただし手術をしても助からなかったり、寝たきりになってしまうことも多いので、手術はご家族とよく相談してから行います。
くも膜下出血
くも膜下出血とは、脳の表面をおおう膜の1つであるくも膜の下に出血をした状態で、非常に死亡率が高い病気です。
おおよその統計として、発症した人の1/3が死亡、1/3が大きな後遺症が残り、社会復帰できるのは残りの1/3と言われています。
くも膜下出血の症状
・突然の今まで経験したことないような激しい頭痛(バットで殴られたような頭痛と表現されることが多いです)
・頭痛に伴う吐き気、嘔吐
・場合によっては意識を失うこともあります。
・手足の麻痺は起こらないことも多いです。
くも膜下出血の原因
くも膜下出血を発症した方の約8割から9割は、脳動脈瘤と呼ばれる動脈のコブからの出血です。
脳動脈瘤は、大きくなって周りの神経や脳の働きを妨害する症状で発見される事もありますが、ほとんどは破れる瞬間まで無症状です。
くも膜下出血の治療
くも膜下出血の患者さんにとって最も危険な事は、再破裂です。
破裂した脳動脈瘤は、もう一度破裂しやく、特に48時間以内が要注意です。
再破裂をしてしまうと脳のダメージがより深刻になり生命の危険が非常に高くなります。この再破裂を防止するためには、手術以外にはありません。
手術には以下の2種類あります。
直接動脈瘤に首根っこにクリップをかける方法
カテーテルを用いて血管の内部から金属のコイルを動脈瘤に詰める方法
どちらもメリット、デメリットがあり、動脈瘤の部位や形、患者さんの体力などに応じて使い分けます。
くも膜下出血の合併症
①脳血管攣縮(のうけっかんれんしゅく)
くも膜下出血の最大の合併症といっても過言ではありません。
発症数日後から2週間くらいまで、脳の血管が縮む時期があり、その程度が強い場合は脳梗塞を引き起こすことがあります。
重症なものだと生命に関わることもあり、ここを乗り越えて初めてヤマを越えたということができます。
②水頭症
髄液の循環が悪くなることで頭に水が溜まってくることがあります。
発症から1か月くらいまでその時期は続きます。そうなると認知症に似た症状や歩行障害などが出てきます。
この場合はシャント手術を行えば改善することが多いです。
正常な頭部CT⬇︎
水頭症の頭部CT⬇︎ 水頭症では黒い部分(脳室)が拡大します。
くも膜下出血にならないために
☆くも膜下出血にならない人とは?
語弊は少しありますが、脳動脈瘤がない人はほとんどなりません(特殊な病気は除外します)。
☆では、どのように調べるかというと?
通常のCT検査ではわかりません。MRA検査(MRI検査の一部)もしくは造影剤を使った3DCT検査で90%以上診断できます。
☆家族にくも膜下出血を起こした人がいる場合
くも膜下出血になる確率が上がりますので、40歳を超えたら1度脳ドックをお勧めします。
また動脈瘤は高血圧によって、新たにできやすくなったり大きくなりやすいので、高血圧の徹底的な管理が重要です。
もし動脈瘤が見つかってしまったら
出血する前の脳動脈瘤を、未破裂脳動脈瘤といいます。
未破裂脳動脈瘤は、出血するまでは全く症状はありません。
未破裂脳動脈瘤は大きいものほど破れやすく、小さいものは破れにくいという事がわかっています。
平均すると、5~7mmを超える脳動脈瘤では、1年に1%くらい(100人に1人くらい)が破れて出血します。
また動脈瘤の部位や形によっても破裂のしやすさは異なります。
一般的には5mm以下のものは破裂率は極めて低いと考えてよいと思われます。
脳卒中(全般)の予防
脳卒中は、予防できる病気です。
頻繁に病院に来ることでも、頭の検査をたくさん行うことでもありません。
最も重要なのは生活習慣病を予防することです。
特に高血圧、高コレステロール血症、糖尿病、動脈硬化の予防を徹底することが、脳卒中の予防に最も効果的です。
また不整脈(特に心房細動)は脳梗塞の原因となりえます。
不整脈がある場合はすぐかかりつけ医に相談しましょう。
くも膜下出血や脳梗塞の予防のために、一度は脳ドックを受けましょう。
脳卒中予防の10か条
①手始めに高血圧から治しましょう
②糖尿病放っておいたら悔い残る
③不整脈見つかり次第すぐ受診
④予防にはタバコを止める意志を持て
⑤アルコール控えめは薬過ぎれば毒
⑥高すぎるコレステロールも見逃すな
⑦食事の塩分・脂肪は控えめに
⑧体力に合った運動続けよう
⑨万病の引き金になる太りすぎ
⑩脳卒中起きたらすぐに病院へ
番外編:お薬は勝手にやめずに相談を
最後に
脳卒中のサインを 『FAST』と覚えておいてください。
F : Face(顔)
A : Arm(腕)
S : Speech(言葉)
T : Time(発症時刻)