脳が原因のめまいはこの4つ
皆様、こんにちは。
すぎなみ脳神経外科・しびれ・頭痛クリニック院長の遠藤です。
当院では、しびれ、頭痛だけでなく、脳神経外科に関連するほとんどの症状の方の受け入れを行っています。
当然その中で、めまいは比較的多く遭遇する症状です。
めまいは、大部分は耳が原因のめまいで、その多くは緊急性は低い場合が多いです。
脳が原因のめまいは頻度自体は少ないのですが、緊急性が高いことが多いです。
めまいの概要については、こちらでまとめておりますので、この記事では、脳関連の危険なめまいに特化してお話したいと思います。
脳が原因のめまいについては、基本的には、脳の中の小脳という部分が障害を受けた時に起こることがほとんどです。
小脳は平衡感覚や運動調整の機能をつかさどっています。
なので小脳に病変が発生すると、平衡感覚がおかしくなり、めまいやふらつきが起こります。
日常的に遭遇する頻度が高い順に解説していきます。
① 小脳梗塞
脳梗塞のうち、小脳に発生するものを小脳梗塞といいます。
小脳に向かう血管がつまってしまった際に発症します。
激しい回転性めまいや歩けないほどのふらつきが突然起こり、それが長時間持続します。
めまいによる嘔吐を繰り返すこともあります。頭痛はそれほど多くありません。
脳梗塞の範囲によって軽症〜重度のものまであります。
重度のものは、重症感が高いが誰が見てもわかるので、救急病院に受診することが多いかと思いますが、軽症のものは、耳が原因の心配ないタイプと区別がつきづらいことがあります。
そうした場合は、画像診断が必須になりますが、CTでは初期の小脳梗塞は分かりづらいことが多く、MRIでないと診断が難しいケースもあり注意が必要です。
たとえば下の写真で、aがCT写真。bとcがMRI写真です。
CTで赤矢印の黒っぽい部分が小脳梗塞ですが、わかりづらいですね。
b,cのMRIでは明らかに同部位が白っぽくなっているのがわかります。
症状が軽ければ、aの写真だけで判断されたら見逃されてしまうかもしれません。
脳梗塞全般に言えますが、CTだけでは正確な診断には不十分なことが多いです。
小脳梗塞の治療は、基本的には点滴による薬剤投与になりますが、小脳梗塞の範囲が広い場合には減圧術という開頭手術が必要になる場合があります。
② 小脳出血
小脳出血は、小脳梗塞よりは頻度は1/4程度と少ないですが、それなりに遭遇する疾患です。
小脳梗塞同様、突然に激しいめまい、ふらつきをきたしますが、小脳出血では、強い頭痛や嘔吐を伴うことが多いです。
出血の量によって軽症〜重症にわかれます。
小脳出血は、CTでほぼ100%診断できます。
CTでは、このように白くはっきりとわかります(赤矢印)。
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MRIでも、もちろん診断可能です。MRIは何種類も撮影条件があるので、条件によって白っぽく写ったり黒っぽく写ったりします。
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小脳出血の治療は、出血量が少ない場合は、血圧を下げたり、脳が腫れてこないようにする薬を使ったりしながら、血液が自然に吸収されるのを待ちます。
出血量が多く、意識が悪くなってきた場合などは緊急で開頭手術が必要になります。
③ 小脳腫瘍
小脳にできる脳腫瘍を小脳腫瘍といいます。頻度は、上2つの疾患に比べたらぐんと下がります。
小脳腫瘍でもめまい、ふらつき、頭痛などが起こりますが、小脳梗塞や小脳出血と違い、突然発症ではなく、徐々に症状が出てきます。
CTでは、小さいものは分かりづらいことが多く、MRIを撮らないとわからないことおあります。
小脳腫瘍の治療は、小さいものは経過観察、大きいものは開頭手術になることが多いです。
基本、小脳から発生する腫瘍は、良性腫瘍がほとんどですが、良性腫瘍にも何種類もありそれによって手術方法が違ってきます。
悪性の場合は、内臓からのがんが転移するケースがほとんどで、ごく稀に小脳から発生するものあります。
④ 椎骨脳底動脈循環不全
椎骨脳底動脈循環不全とは、首の横を通って小脳に入っていく椎骨動脈や、脳内で左右の椎骨動脈が合流する脳底動脈の血流が一時的に低下する状態のことを指します。
主に動脈硬化によって椎骨動脈、脳底動脈が狭くなってしまい、小脳への血流が低下することでめまいを引き起こします。
CTでは診断がつかず、MRIで診断します。
脳循環代謝を改善させるための薬などで治療し、動脈硬化が進まないように血圧管理、血糖管理、脂質管理などを行います。
まとめ
例外はありますが、脳が原因のめまいの多くが小脳の病変です。
小脳病変は緊急性の高い疾患が多いため、急なめまいの際にはそれらの疾患の除外が必要です。
小脳病変でないことが判明すれば、めまいは必ず短時間で改善しますので、それほど心配しないでいい場合がほとんどです。
先ほどに申しましたように耳が原因のめまいが大多数なのですが、では最初に耳鼻科と脳神経外科どちらにかかればいいのかわからない方もいるかと思います。
もちろん決まりはありませんが、単純明快な分け方としては、
『日常的にいつもあるようなめまいであれば耳鼻科、突然の強いめまいであれば脳神経外科を受診する』
というような形にすればよろしいのではないでしょうか。