手術で治る認知症、正常圧水頭症とは?
- 2023年4月24日
- 認知症
皆様、こんにちは。
すぎなみ脳神経外科・しびれ・頭痛クリニック院長の遠藤です。

今回は、認知症に似た症状を引き起こす「正常圧水頭症」についてお話しします。
認知症というと、アルツハイマー病などを思い浮かべる方が多いと思います。
しかし、物忘れや歩行障害などが現れる病気の中には、手術によって症状の改善が期待できるものがあります。
その代表的な病気が、正常圧水頭症です。
脳神経外科では以前から知られている病気ですが、一般の方にはあまりなじみがないかもしれません。
正常圧水頭症とは?

私たちの脳や脊髄の周囲には、「髄液(ずいえき)」という透明な液体が循環しています。
正常圧水頭症は、この髄液の循環や吸収のバランスが崩れることで、脳の中にある「脳室」という空間が拡大し、さまざまな症状を引き起こす病気です。
特に高齢者に多く、明らかな原因がなく発症するものを「特発性正常圧水頭症」と呼びます。
脳室が拡大していても、検査で測定する髄液の圧力が必ずしも高くないことから、この名前がついています。
正常圧水頭症の代表的な3つの症状
正常圧水頭症では、主に次の3つの症状がみられます。
① 歩行障害
実は、正常圧水頭症で特に重要なのが歩行障害です。

・歩幅が小さくなる
・足が床に張りついたように歩く
・歩き始めに足が出にくい
・方向転換が苦手になる
・転びやすくなる
このような症状が徐々に現れます。
ご家族が「最近、歩き方がおかしくなった」と気づくこともあります。
② 認知機能の低下

物忘れだけでなく、反応が遅くなったり、何事にも意欲がなくなったりすることがあります。
アルツハイマー病とは症状の出方が異なる場合もありますが、実際には区別が難しいケースもあります。
③ 排尿障害

尿が近くなったり、急に尿意を感じて我慢できなくなったり、尿失禁がみられることがあります。
ただし、この3つの症状が必ずすべてそろうわけではありません。
特に歩行障害が目立つ場合には、正常圧水頭症を疑うきっかけになります。
正常圧水頭症はMRIでわかるの?

正常圧水頭症が疑われる場合、CTやMRIによる画像検査が重要です。
脳室が拡大しているかどうかに加え、脳の表面にある髄液の空間が部分的に狭くなったり、逆に広がったりしていないかなどを確認します。
特にMRIでは、正常圧水頭症に特徴的な画像所見を詳しく評価することができます。
ただし、高齢になると脳の萎縮によって脳室が拡大することもあります。
そのため、脳室が大きいという理由だけで、正常圧水頭症と診断することはできません。
症状や診察所見、画像検査などを総合して判断することが大切です。
髄液を抜いて症状が改善するか調べる検査

正常圧水頭症が疑われる場合、「タップテスト」という検査を行うことがあります。
これは、腰から針を刺して髄液を一定量抜き、歩行などの症状が改善するかを調べる検査です。
髄液を抜いた後に歩行が改善すれば、シャント手術によって症状が改善する可能性が高いと判断する重要な材料になります。
ただし、タップテストで明らかな改善がみられなかったからといって、正常圧水頭症を完全に否定できるわけではありません。
また、検査直後だけでなく、数日間にわたって変化を確認することもあります。
こうした専門的な検査は、必要に応じて専門医療機関で行います。
正常圧水頭症は手術で治るの?
正常圧水頭症では、正しく診断できればシャント手術によって症状の改善が期待できます。
シャント手術とは、脳や脊髄の周囲にある髄液を、細い管を使ってお腹の中などに流す手術です。

代表的な方法には、
・VPシャント術:脳室からお腹へ髄液を流す方法
・LPシャント術:腰の髄液腔からお腹へ髄液を流す方法
があります。
どちらの方法を選択するかは、患者さんの全身状態や脊椎の状態などによって異なります。
正常圧水頭症は、手術によって歩行障害などが改善する可能性のある病気です。
特に歩行障害は、比較的改善が期待しやすい症状とされています。
一方で、認知機能の低下や排尿障害については、改善の程度に個人差があります。
また、高齢の患者さんに行うことも多い手術ですが、感染や出血、髄液の流れすぎなどの合併症が起こる可能性もあります。
手術をすれば必ず元どおりになるわけではなく、手術の効果と危険性を十分に検討することが重要です。
アルツハイマー病やレビー小体型認知症などと合併することも

もう一つ重要なのは、正常圧水頭症とアルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症などの認知症が、同時に存在する場合もあるということです。
そのような場合には、シャント手術によって歩行障害が改善しても、認知機能の改善は限定的になることがあります。
そのため、手術前にはほかの病気の可能性についても十分に検討する必要があります。
最後に
正常圧水頭症は、物忘れや歩行障害、排尿障害など、認知症や加齢による変化と間違われやすい病気です。
しかし、適切に診断し、手術によって症状の改善が期待できるという点で、見逃したくない病気の一つです。
特に、
「最近、歩幅が小さくなった」
「歩き始めや方向転換が難しくなった」
「歩きにくさに加えて、物忘れも目立ってきた」
このような変化がみられる場合には、正常圧水頭症の可能性も考える必要があります。
私はこれまで、脳神経外科医として水頭症を含むさまざまな脳疾患の診療に携わってきました。
その経験からも、年齢のせい、認知症のせいと決めつけず、治療できる原因が隠れていないかを確認することが大切だと考えています。
当院では、診察やMRIなどの画像検査を通じて正常圧水頭症の可能性を評価し、手術などの専門的な治療が必要と判断した場合には、適切な医療機関をご紹介いたします。
気になる症状がございましたら、お気軽にご相談ください。
今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。