糖尿病による手足のしびれ
- 2023年5月29日
- しびれ
皆様、こんにちは。
すぎなみ脳神経外科・しびれ・頭痛クリニック院長の遠藤です。
今回は、糖尿病による手足のしびれについて解説していまいります。
糖尿病は、初期の頃は無症状ですが、進行すると様々な合併症を引き起こします。
糖尿病の3大合併症は、以下の3つとされています。
① 神経障害
② 腎臓障害
③ 眼(網膜)障害
ここでは、手足のしびれを引き起こす①の神経障害についてお話いたします
糖尿病性神経障害とは?
糖尿病によって神経が障害されることを『糖尿病性神経障害』といいます。
糖尿病患者の4割近くに見られるとされ、3大合併症の中でも最も頻度が多いとされています。
糖尿病により、血糖が上昇すると、神経に糖の代謝物が蓄積されたり、神経への血流が悪くなることで、神経細胞が障害され、手足のしびれが起こります。
糖尿病性神経障害の症状
まず多いのが、足のしびれや異常感覚が現われ、以下の症状が多いとされています。
・足先や足裏がジンジンする
・砂利の上を歩いている感じがする
・足先がほてったり冷たく感じたりする
・よく足がつる
また手や指先にもしびれが出る場合もあり、その場合は、足の症状と合わせて出ることが多いです。
手袋(グローブ)をする範囲と靴下(ストッキング)を履く範囲にしびれが出ることが多いため、『グローブ&ストッキング型神経障害』と言われることもあります。
グローブ&ストッキング型神経障害では、下の図の赤い部分がしびれます。
糖尿病性神経障害によるしびれは、左右対称に起こることが多く、安静時や夜間に強くなるといった特徴があります。
糖尿病神経障害を放置すると?
糖尿病性神経障害が進行すると、足の感覚がなくなり怪我や火傷などに気づきにくくなったりします。
最悪の場合は、感染や壊死に気づかず、足を切断しなければいけなくなるケースもあります。
また狭心症や心筋梗塞では、激しい胸痛がありますが、糖尿病性神経障害が進行すると、痛みを感じなくなることがあります。
これを無痛性心筋梗塞といいます。
心筋梗塞では、一刻も早く治療を開始する必要がありますが、無痛性心筋梗塞では、発見が遅れ、治療が間に合わなくなるリスクが高くなります。
糖尿病神経障害の診断
もちろん、糖尿病が前提にあることが重要です。
糖尿病は、採血結果で容易にわかります。
糖尿病があるからといっても、似たようなしびれを来す疾患も多いので、まずは注意深い診察や画像検査などをしっかり行い、これらの疾患との鑑別を行う必要があります
手と足のしびれをきたすもの
頚椎症、頚椎椎間板ヘルニア
手のしびれをきたすもの
頚椎症、頚椎椎間板ヘルニア、手根管症候群、肘部管症候群、円回内筋症候群
足や足裏のしびれをきたすもの
腰部脊柱管狭窄症、腰椎椎間板ヘルニア、足根管症候群
糖尿病神経障害の治療
まずは、ベースの糖尿病の治療をすることが最も重要です。
糖尿病が改善しないと、神経障害も改善しません。
HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)という、糖尿病の重症度の指標があり、6.5%を超えると糖尿病といわれます。
糖尿病性神経障害を出始めるのは、HbA1Cが8%前後くらいですので、7%以下にしっかりコントロールする必要があります。
その上で、症状を緩和する以下の薬剤を用いることがあります。
キネダック
高血糖による代謝物が神経細胞に蓄積すると神経障害が出現するといわれており、キネダックはこの代謝物の量を減らす作用があります。その作用により神経の働きを改善します。が、あまり効く印象はありません。
リリカ(プレガバリン)、タリージェ
広く使われている神経痛のお薬で、糖尿病性神経障害にも用いることはあります。効果は人それぞれの印象です。
ビタミンB12(メチコバール、メコバラミン)
神経細胞を修復する効果があるといわれるビタミンB12も、糖尿病性神経障害にも用いますが、ほぼサプリメントのような薬なので、大きな効果は期待できません。
漢方
牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)、八味地黄丸(はちみじおうがん)といった漢方も、補助的に用いることもあります。
あくまで補助的であり治療の主役とはなりづらいです。
結局、劇的に改善させる薬剤はほとんどなく、糖尿病自体の治療を行うことが、最も神経障害を改善させることにつながります。
まずはHbA1Cを7%以下に下げて、神経の回復を待つしかありません。
HbA1Cが下がってもすぐに神経は元に戻るわけではないので、上記薬剤などで少しでも症状を緩和しつつ、神経細胞の回復を地道に待ちましょう。