頭を打ったら病院に行くべき?頭部打撲・むちうち症の症状と検査について
皆様、こんにちは。
すぎなみ脳神経外科・しびれ・頭痛クリニック院長の遠藤です。

今回は、頭部打撲とむちうち症についてお話しします。
転倒して頭を打ったり、交通事故で首を痛めたりすることは、日常生活の中でも珍しくありません。
「頭を打ったけど、病院に行った方がいい?」
「意識は失っていないから大丈夫?」
「交通事故の翌日から首が痛くなってきた」
当院でも、このようなご相談をいただくことがあります。
頭部打撲の多くは大きな問題なく回復しますが、中には頭の中で出血が起こっている場合もあります。
今回は、頭を打った後に注意したい病気や症状、検査、むちうち症について、わかりやすく解説します。
頭を打った時に注意したい病気とは?
頭を打った際に、私たち脳神経外科医がまず確認するのは、頭の中で出血が起こっていないか、脳そのものが傷ついていないかということです。
頭部外傷によって起こる代表的な病気には、次のようなものがあります。
① 急性硬膜外血腫

頭蓋骨と脳を覆う膜(硬膜)の外側に血液がたまる病気です。
頭を打った直後は意識がはっきりしていても、その後、急激に状態が悪化することがあります。
② 急性硬膜下血腫

頭蓋骨と脳を覆う膜(硬膜)の内側に血液がたまる病気です。
強い衝撃によって起こることが多く、重症の場合には命に関わることもあります。
急性硬膜外血腫と比較して、脳そのものの損傷を伴うことが多く、重症化しやすいのが特徴です。そのため、緊急性が非常に高く、速やかな診断と治療が必要になります。
③ 外傷性くも膜下出血

脳の表面を覆う膜(くも膜)の内側に出血が起こる病気です。
頭痛や吐き気、意識障害などが現れることがあります。
外傷性くも膜下出血だけで、出血量が少なく、ほかに脳の損傷を伴わない場合には、比較的経過が良好なケースが多くみられます。
一方で、急性硬膜下血腫や脳挫傷などを合併している場合には、重症化することもあるため注意が必要です。
④ 脳挫傷

頭への強い衝撃によって、脳そのものが傷ついてしまう状態です。
受傷直後は症状が軽くても、時間の経過とともに出血や脳の腫れが悪化することがあります。
これらの病気は、重症の場合には入院治療や緊急手術が必要になることもあります。
もちろん、頭を打ったからといって、必ずこうした病気になるわけではありません。
大切なのは、頭を打った時の状況や、その後の症状をしっかり確認することです。
こんな症状があれば、すぐに病院へ
頭を打った後に、次のような症状がある場合には注意が必要です。


・頭痛がどんどん強くなる
・何度も吐いてしまう
・意識がぼんやりしている
・手足に力が入らない
・けいれんを起こした
・会話や反応がいつもと違う
・歩けないほどふらつく
このような場合には、救急車を呼ぶなどして速やかに救急医療機関を受診してください。
また、一時的に意識を失った場合や、頭を打った前後の記憶がない場合も、早急な評価が必要です。
意識を失っていないからといって、頭の中に出血がないとは限りません。
特に高齢者の方や、血液を固まりにくくする薬を服用している方は、軽い頭部打撲でも注意が必要です。
CTやMRIが正常でも頭痛が続くことはある?
あります。
頭を打った後、画像検査で異常が見つからなくても、頭痛やめまい、吐き気などが続くことがあります。
その原因の一つが、脳震盪(のうしんとう)です。
脳震盪では、頭への衝撃によって一時的に脳の働きに異常が生じます。
頭痛やめまいのほか、集中力の低下、物忘れ、頭がぼーっとするなどの症状が現れることもあります。
脳震盪は、CTやMRIで異常が見つからないことも多い病気です。

そのため、画像検査が正常だからといって、症状を無視してよいわけではありません。
脳震盪が疑われる場合、最初の24〜48時間程度は無理をせず、症状に応じて少しずつ日常生活に戻していくことが勧められています。
特にスポーツへの復帰は、十分に回復したことを確認しながら段階的に進める必要があります。
頭を打って1か月後に症状が出ることもある?
特に高齢者の方では、頭を打ってから数週間〜1、2か月ほど経過して、頭痛やふらつきなどが現れることがあります。
その原因の一つが慢性硬膜下血腫(まんせいこうまくかけっしゅ)です。

これは、脳の表面にゆっくりと血液がたまり、脳を圧迫してしまう病気です。
頭痛だけでなく、歩きにくさや物忘れなどの症状が現れることもあり、認知症と間違われる場合もあります。
頭を打った直後のCTが正常でも、後から発症することがあるため注意が必要です。
慢性硬膜下血腫は、適切な治療によって症状の改善が期待できる病気です。
詳しくは、別の記事「頭を打った1か月後に症状が出る?慢性硬膜下血腫とは」でも解説しています。
むちうち症とは?

むちうち症とは、交通事故などで首が急激に揺さぶられ、首の筋肉や靱帯などに負担がかかることで起こる症状の総称です。
特に、車に乗っていて後ろから追突された場合などによくみられます。
代表的な症状には、
・首の痛み
・首を動かした時の痛み
・肩や肩甲骨周囲の痛み
・後頭部の頭痛
・首や肩の重だるさ
などがあります。
事故の直後は症状が軽くても、翌日以降に痛みが強くなることがあります。
また、むちうち症によって後頭部を中心とした頭痛が起こることもあります。
むちうち症はMRIでわかる?治療は?

むちうち症の多くは、筋肉や靱帯などの損傷が中心であり、MRIでも明らかな異常が見つからないことがあります。
一方で、首の痛みに加えて手足のしびれや麻痺などがある場合には、頚椎や神経、脊髄などに異常がないか調べる必要があります。
そのような場合には、頚椎MRIなどが役立ちます。
治療は、痛み止めなどの薬を使用しながら、症状に応じて少しずつ普段の生活に戻していくことが基本です。
骨折などの重大な損傷がなければ、長期間の安静や首の固定は一般的には勧められていません。
ただし、強い首の痛みや手足の麻痺がある場合には、重大な損傷が隠れている可能性があるため、早急な評価が必要です。
また、まれではありますが、首への強い衝撃によって、首の血管が傷つく「椎骨動脈解離」などが起こることもあります。
突然の強い後頭部痛や首の痛みに加えて、激しいめまいやふらつき、手足の麻痺などが現れた場合には、速やかな救急受診が必要です。
最後に
頭部打撲やむちうち症は、日常生活の中でも比較的よくみられる外傷です。
多くの場合は大きな問題なく回復しますが、中には頭蓋内出血や脳挫傷、頚椎の損傷などが隠れていることもあります。
また、頭を打った直後に異常がなくても、後から症状が現れる場合や、CT・MRIが正常でも脳震盪による症状が続く場合があります。
当院では、脳神経外科専門医による診察に加え、必要に応じてCTやMRIによる画像検査を行っています。
頭を打った後の頭痛やめまい、交通事故後の首の痛みなどでお困りの場合には、お気軽にご相談ください。
なお、意識障害や麻痺、繰り返す嘔吐などがある場合には、当院の外来受診を待たず、救急医療機関を受診してください。