運動や筋トレをすると頭が痛い!運動時頭痛の原因と治療について
- 2023年4月8日
- 頭痛
皆様、こんにちは。
すぎなみ脳神経外科・しびれ・頭痛クリニック院長の遠藤です。

今回は、運動や筋トレをしたときに起こる頭痛についてお話しします。
普段は頭痛がないのに、激しい運動をすると頭が痛くなる。
ベンチプレスやスクワットなど、強い力を入れた瞬間に頭痛が起こる。
このような症状を経験したことはないでしょうか。
運動中や運動後に起こる頭痛は、一般に「運動時頭痛」と呼ばれます。
当院の頭痛外来にも、このような症状で受診される方がいらっしゃいます。
私の経験では、特に高強度の筋トレや重量挙げ、全力に近い無酸素運動などを行っている方に多い印象です。
多くの場合は深刻な病気ではありませんが、運動をきっかけに起こる頭痛の中には、脳血管の病気が隠れている場合もあります。
今回は、その特徴や原因、治療について解説します。
運動時頭痛とは?

運動時頭痛は、激しい運動中や運動後に起こる頭痛です。
特に、以下のような運動をきっかけに起こることがあります。

・ベンチプレスやスクワットなどの高強度の筋トレ
・重量挙げ
・全力でのダッシュ
・激しいランニング
・その他、強い負荷がかかるスポーツ
頭痛はズキズキと脈打つような痛みであることが多く、頭全体や後頭部などに現れます。
運動をやめると比較的短時間で改善する場合もありますが、数時間以上続くこともあります。
一次性運動時頭痛とは?
脳に原因となる病気が認められない運動時頭痛を、「一次性運動時頭痛」と呼びます。
国際頭痛分類では、主に次のような特徴があります。
・激しい運動中、または運動後にのみ頭痛が起こる
・頭痛の持続時間が48時間未満である
・同様の頭痛を2回以上経験している
・他の病気では説明できない
つまり、運動をしたときにだけ頭痛が起こり、脳血管障害などの原因疾患が認められない場合に診断されます。
ただし、初めて運動時頭痛が起こった段階では、一次性と決めつけないことが重要です。
なぜ運動すると頭が痛くなるの?

一次性運動時頭痛の詳しい原因は、まだ十分に解明されていません。
運動によって血圧や心拍数が上昇し、脳の血管や頭蓋内の血流に変化が起こることが関係していると考えられています。
特に高重量の筋トレでは、力を入れる際に息を止めてしまうことがあります。
いわゆる「いきみ」によって胸やお腹の圧力が上がり、頭の中の静脈圧にも変化が生じます。
こうした変化が頭痛を引き起こす可能性があります。
ただし、これは考えられているメカニズムの一つであり、すべての運動時頭痛を説明できるわけではありません。
筋トレ中に起こる頭痛には注意が必要です
運動時頭痛の中でも、ベンチプレスやスクワットなどで高重量を扱った際に、突然強い頭痛が起こるケースがあります。
このような頭痛では、一次性運動時頭痛だけでなく、脳血管の病気も考える必要があります。
特に注意したいのは、次の3つです。
① くも膜下出血

くも膜下出血は、脳動脈瘤の破裂などによって起こる病気です。
突然、これまで経験したことのない激しい頭痛が起こることが特徴です。
運動中や強くいきんだ際に発症する場合もあります。
突然の激しい頭痛は、運動がきっかけであっても、単なる運動時頭痛と考えてはいけません。
② 可逆性脳血管攣縮症候群(RCVS)

RCVSは、脳の血管が一時的に強く収縮する病気です。
突然の激しい頭痛を繰り返すことが特徴で、運動や筋トレ、入浴、性行為などがきっかけになることがあります。
頭痛以外に症状がない場合もありますが、脳出血や脳梗塞などを合併することもあります。
また、発症直後には血管の異常が画像検査で明らかにならない場合もあるため、注意が必要です。
③ 脳動脈解離

脳や首の動脈の壁が裂けることで起こる病気です。
突然の頭痛や首の痛みが現れることがあり、場合によっては脳梗塞やくも膜下出血の原因となります。
これらの病気は、頭痛だけで発症する場合もあります。
そのため、手足の麻痺などがないからといって、脳血管の病気を完全に否定することはできません。
運動時頭痛と片頭痛の違いは?

もともと片頭痛がある方では、運動によって片頭痛が誘発されたり、頭痛が悪化したりすることがあります。
ただし、一次性運動時頭痛と片頭痛は、別の病気として分類されています。
片頭痛では、吐き気や光・音への過敏などを伴うことがあります。
一方、一次性運動時頭痛では、激しい運動そのものが頭痛の直接的なきっかけとなります。
また、筋トレ中のいきみや咳、くしゃみなどで瞬間的に頭痛が起こる場合には、「咳嗽性頭痛」との区別も必要になります。
頭痛が起こるタイミングや持続時間、随伴症状などを詳しく確認することが重要です。
運動時頭痛ではMRI検査が必要?

初めて運動時頭痛が起こった場合や、頭痛を繰り返す場合には、原因となる病気がないか確認することが大切です。
MRI検査では、脳の病変の有無を確認することができます。
また、必要に応じてMRAなどで脳血管の状態を調べます。
ただし、MRI検査だけですべての病気を除外できるわけではありません。
突然の激しい頭痛では、発症からの時間や症状に応じて、緊急のCT検査や血管画像検査、場合によっては髄液検査などが必要になります。
特に、突然発症して短時間で痛みが最大になる頭痛では、通常の外来MRIを待たず、救急医療機関での評価が必要です。
一次性運動時頭痛の治療
脳血管障害などの原因疾患が認められず、一次性運動時頭痛と診断された場合には、症状に応じて治療を行います。

まずは、頭痛を引き起こす運動の強度を一時的に下げることが基本です。
特に高重量の筋トレでは、急激に負荷を上げず、ウォーミングアップを十分に行うことが大切です。
また、脱水や暑い環境での激しい運動にも注意しましょう。
薬による治療

一次性運動時頭痛には、インドメタシンという消炎鎮痛薬が有効であることが知られています。
インドメタシンは非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の一種です。
日本ではインドメタシンの内服製剤が使用しにくい状況にありますが、関連する薬剤としてアセメタシン(商品名:ランツジール)があります。
アセメタシンは、体内でインドメタシンに変化して作用する薬剤です。
ただし、一次性運動時頭痛に対する効果の根拠はインドメタシンが中心であり、アセメタシンでも同じ効果が得られると確立されているわけではありません。
また、これらの薬剤には胃腸障害や腎機能への影響などの副作用があるため、使用には注意が必要です。
症状によっては、ほかの予防薬などを検討する場合もあります。
運動時にこんな頭痛が起こったら要注意

次のような場合には、特に注意が必要です。
・突然、今まで経験したことのない激しい頭痛が起こった
・数秒から1分程度で痛みが最大になった
・運動中に突然頭痛が起こり、強い痛みが続いている
・頭痛とともに手足のしびれや麻痺が出現した
・ろれつが回らない、言葉が出にくい
・意識が悪くなった
・強い首の痛みを伴う
このような症状がある場合には、くも膜下出血などの病気も考えられます。
通常の外来受診を待たず、救急車を呼んでください。
まとめ
運動や筋トレをしたときに起こる頭痛は、一次性運動時頭痛と呼ばれることがあります。
特に高強度の筋トレや重量挙げなどで、頭痛が誘発される方がいらっしゃいます。
一次性運動時頭痛は比較的良性の病気ですが、運動をきっかけに起こる頭痛の中には、くも膜下出血やRCVS、脳動脈解離などの病気が隠れていることもあります。
大切なのは、最初から運動時頭痛と決めつけず、危険な病気がないか適切に判断することです。
当院では、脳神経外科の立場から診察を行い、必要に応じてMRI・MRA検査などで頭痛の原因を調べています。
運動や筋トレをすると頭痛が起こる症状が続く場合には、当院を含めた医療機関へご相談ください。
ただし、突然の激しい頭痛が起こった場合には、速やかに救急医療機関を受診してください。